おしぼりの枚数から、飲食店の来店数は予測できる? 広島の配送現場から始まったAI活用

ずいぶん前の記事になりますが「おしぼりの回収データとAIを使って来客数を予測する」プロジェクトが終盤に差し掛かってきました。

**広島県リースタオルとCreator’s NEXTが挑む「おしぼりデータ×AI」**という異色のタッグが、なぜ今、経営の景色を塗り替えようとしているのか。

私たちが形にしようとしているサービスを記事にまとめてみようと思います。


我々は毎日、広島県内の飲食店へおしぼりを届け、使用済みのおしぼりを回収しています。

配送を続けていると、「今週はこの店のおしぼりがよく動いている」「このエリアはいつもより静かだ」と感じることがあります。

では、この枚数の変化を使って、これからの来店数を予測することはできないだろうか。
そんな現場の気づきから、私たちのAI活用は始まりました。

【驚きの視点】「おしぼり」は、店舗の鼓動を伝える独自の需要予測データだった
多くの経営者は「POSデータこそが真実」と信じています。しかし、POSはあくまで「売れた後」の結果に過ぎません。対して「おしぼりの出荷データ」は、これから起こる動きを予見する「先行指標」としてのポテンシャルを秘めています。
なぜおしぼりなのか。それは、おしぼりの量が店舗運営のあらゆる要素と密接にリンクしているからです。

• 顧客量×業務量×仕入量×提供量

この四位一体の相関関係こそが、おしぼりデータの正体です。客が来ればおしぼりが必要になり、それに応じて仕込み(仕入量)スタッフの動き(業務量)が決まります。おしぼりの出荷数を見れば、その店の「呼吸」が可視化されるのです。この事実は、一つの強力なメッセージを私たちに突きつけます。
おしぼりの出荷データは、単なる備品の記録ではない。それは、実際の来店動向を考える手がかりになる、独自の経営指標である

多くのDX事例が、複雑なシステム連携やノイズだらけのビッグデータに溺れる中「あらゆる飲食店に必ず存在するアナログな接点」に目をつけました。おしぼりという、シンプルで純度の高いデータに着目したからこそ、導入のハードルを極限まで下げつつ、実効性の高い予測を可能にしたのです。
【地域特性の発見】カープの試合が「マイナス」になる店、 「プラス」になる店
このAIの凄みは、単なる数字の処理能力ではなく、広島という土地の熱量を学習している点にあります。その象徴が「広島東洋カープ」の影響分析です。
AIは広島市・福山市でお取引をさせて頂いている1,230店舗、のべ14万日分という膨大なデータを解析しました。その結果、一般的な統計では「カープの試合日は、マツダスタジアム周辺に人流が集中するため、他エリアの店舗では需要が平均3.6%減少する」という「負の側面」が浮き彫りになりました。
しかし、AIはそこから先の「特殊解」を見逃しません。スタジアムへのアクセスが良い人気店「Y店」様の場合、カープの試合日は逆に1.3%の需要増となることが判明したのです。さらに祝日に至っては、全体平均(3.9%増)を遥かに凌駕する28.9%増という「特徴的な来店傾向」が導き出されました。
ここに、地域密着型AIの真の価値があります。画一的なアルゴリズムや全国一律の天候予測に頼るシステムでは、Y店様の「1.3%増」という絶好のチャンスを読み切れず、過少発注による機会損失を招いていたはずです。地域特有の変数を読み解くことで、その店だけの「店舗ごとの傾向」を提示できる。これこそが、現場が求めていたインテリジェンスです。

【逆転の発想】デジタルを「紙」で届ける。現場が本当に求めていたAIの形

驚くべきことに、この最先端AIが導き出した予測は、タブレット端末だけでなく、あえて「紙のレポート」や「カレンダー」としても提供されます。
デジタル化=ペーパーレスという固定観念が強い中、なぜ彼らはアナログにこだわるのか。それは、店長が忙しい合間にポケットにねじ込み、いつでも確認できる**「虎の巻(ホワイトペーパー)」**としての役割を重視したからです。

• 来客数予測カレンダー: バックヤードに貼るだけで、スタッフ全員がシフトの意図を理解できる。
• 発注量目安表: ペンを片手に、そのままチェックリストとして発注作業に使える。

テクノロジーが現場を支配するのではなく、現場の習慣にテクノロジーが寄り添う。――筆者は、これこそがDXにおける「ラストワンマイルの設計」だと確信します。デジタルを「紙」という手馴染みの良い道具に変換することで、スタッフの納得感を生み、確実な行動変容へと繋げているのです。

結び:データと人間が「伴走」する、飲食業の新しい未来
AIは決して、職人の技術や店長の情熱を奪うものではありません。むしろ、予測という重荷をAIが肩代わりすることで、人間は本来の使命である「最高の一皿」と「温かな接客」に全力を注げるようになります。
おしぼり一枚のデータから、店舗の呼吸を読み解き、未来の仕込みを支える。データが導き出す冷静な「予測」と、人間が提供する情緒的な「おもてなし」が伴走する時、広島の飲食業はかつてないほど強靭で、魅力的な場所へと進化するでしょう。
あなたの街の、あのお店。もし、今日手渡された一枚のおしぼりが、その店の未来を予測しているとしたら。次に暖簾をくぐるとき、あなたの目に映る景色は、今までとは少し違ったものになっているかもしれません。

感染予防に効果的な「エチケットタオル」登場